刃物への考察…
刃物犯罪に対する議論は、凶悪な刃物犯罪が何故発生したのか原因を追及する事と刃物を
扱う人の心の対策を考える事の二つだと思います。
現在、刃物犯罪を冷静な意見寄りも刃物の危険性を強調している傾向が強いと思います。
安直な結論として危険な刃物が身近に有るから犯罪が発生したと決め刃物を持たせ無い指導
等が未だ行われています。刃物犯罪の対策として社会から刃物を遠ざけるべきだと考える
事は臭い物に蓋をする様に目先の現象を隠すだけで本当の原因や対策と言った物とは言い
難く本末転倒で何の役にも立っていないのが現状です。
終戦後、刃物による犯罪が増加し社会問題化します。決定的な出来事が1960(昭和35)年10月社会党委員長浅沼稲次郎氏が、演説中に右翼少年に刺殺されると言う事件が全国に映像で
流れた事が契機に「刃物追放運動」が全国規模で津波の様に広がりました。更に其の2年後、
1962(昭和37)年には、「銃砲刀剣所持取締法」が規制強化の方向で改正。刃物は悪で有ると決めつけました。(事件に使われた刃物が銃剣で有る事は余り論じられていません)
結局、真の原因の究明がなされない儘、有効な対策が行われなかった事が現在に繋がって
います。社会が一番に認識しなければなら無いのは、犯罪に使われている道具である刃物が
危ないのでは無く使う人間の心の闇に潜む怨念・恨み妬みから来る邪心が危ないのです。
「刃物が危険な道具だから社会から遠ざける」対策を改め刃物を扱う人の心構えの在り方を
伝えるのが本道だと思います。
終戦後、戦前の教育や考え方が間違っていた言う認識が過剰に行き過ぎ学校教育や家庭生活
に措いて社会から刃物を排除してしまった結果、子供に刃物の扱い方や使う時の心構えを
何一つ躾けられず教えられなかった事が現在社会を生み出し現在の凶悪犯罪の原因の一つの
要因では無いでしょうか?
現在の日本の使い捨て文化や世界有数の豊かな生活が日本の刃物文化や日本特有の研ぎ文化
を放棄した事も見逃せません。道具で有る刃物は有益で有る反面、使い方次第で危険性も
伴う事は古今東西、自明の理です。刃物を用いる心構えは使う人が傷付かぬ様に人に
刃を向けては行けないと言う事が必定条件と成り半世紀前迄は不文律として親が子供へ
師匠が弟子へ先輩が後輩に厳しく伝えて来た躾です。此れ等を失った代償は余りにも大きい
と言わざるを得ません。日本人は戦後、物が豊富になった半面、失った物が余りにも多い
様に思われます。人類の文明に置いて刃物は最古の道具の一つで有り最も人間の暮らしに
役立ち石から金属へと進化を遂げながら人々の生活を支えて来ました。
刃物は現代に至って尚、必要不可欠な道具です。其の事を社会が認識しなければ刃物犯罪は
減らないと考えます。
幼い時から道具を扱う倫理、道具への尊敬を確りと叩き込ませ過程の中で健全な精神と技を
身に付けさせる事が大事であると御吉兆 桃渓は考えています。
改めて、次世代を担う子供達に人間として最低限の基本的な躾を(刃物の扱い方を含め)
家庭で始める事、学校に措いても百年の計を見据えた気の長い基本教育を考えなければ
未来への良い道は拓けて来ないのでは無いでしょうか。
包丁の種類…
壱:和包丁=和食文化を支え多種多様な用途に有った包丁が発達した。
日本は日本刀に代表される様に世界でも優秀な刃物文化が発達した事から
本焼き包丁や合せ包丁が有り合せ包丁にも装飾も加味した墨流し鏡面と呼ばれ
呼ばれる鋼を積み重ねた合せ包丁も有る。日本の包丁の特徴として両刃以外
にも片刃の包丁も色々な包丁に適用されている。又、関西と関東の文化の
違いから関西型と関東型に分かれている。種類としては刺身包丁では関西の
河豚引き包丁及び柳刃、関東の蛸引き包丁が有り日本刀の様な先丸型刺身
包丁も有る。寸法は、30㎜単位で180㎜~360㎜迄有り最大420㎜にも成る。
出刃包丁は、出刃以外に大出刃・中出刃・小出刃・相出刃・船行・鮭切り・
鯵切り・身卸し・叩きが有る。寸法は120㎜~360㎜迄有る。出刃包丁と刺身
包丁の中間的な包丁として切付け包丁が有る。
薄刃包丁では、東型・鎌形・細工・面取り・剥物・皮剥き・菜切り包丁
が有る。寸法は、120㎜~240㎜迄。
特殊包丁では有名な鱧切りや関西寿司を代表する巻き寿司や押し寿司を切る
寿司切り包丁や鮪切り・鯨切り・鰻切り・泥鰌切り・西瓜切り・麺切り
(蕎麦用・饂飩用)餅切り等の多種多様な包丁が有り現在は神前で奉納される
式包丁の様な古式型の包丁も有る。
弐:洋包丁=和包丁に比べると種類は少ないが牛刀・小型包丁(ペティー)・
筋切り・骨漉き・皮漉き・パン切り包丁が有る。洋出刃は日本で考案された
包丁で骨を叩き切るのに適し逆輸出されて欧州で広く普及している。又、
最近では、柳刃包丁の様式型も販売されている。此方は両刃・・・
三徳包丁は、戦後、洋式の台所が普及した事や洋食文化が家庭で広がった事で
洋包丁の牛刀・和包丁の出刃・菜切り包丁を融合させ一本の包丁で肉を切り
魚を捌き野菜を切る事から三徳の有る包丁として日本に広く普及している。
洋包丁は基本両刃だが日本では片刃包丁が普及している事も有り両刃ながら
日本の優れた刃物文化に溶け込み右利きや左利き用に適した洋包丁の片刃式
両刃包丁が普及している。
参:中華包丁=長方形の包丁で日本では麺切り包丁に似ている。基本厚刃・中刃・
薄刃の三種類で有るが河北と河南では形状が変わる。厚刃は鳥や動物の骨を
叩き切るのに適し中刃は、魚の骨や南瓜や根物を切るのに使われる。薄刃は
菜切りや意外にも細かい作業に適している。日本では余り普及していない為、
洋包丁の様に片刃式両刃の様な包丁は無い。完全な両刃で有る。
切るに付いて…
太古の昔から切断行為は必要不可欠で古今東西日常生活に溶け込んでいます。
人は、切断作業に知恵を働かし石器から青銅器・鋼へと変わり多種多様の刃物を
考案して行きました。日進月歩で進化を続けています。実は文明科学の発達した
今日でも切断の原理は余り詳しく解明されていません。幾つかの説が有り有力な
節を幾つか紹介します。一つ目が鋭い刃物の刃先には目に見えない細かな鋸状に
成っています。刃物を前後に動かすと素材が引っ掛かり引っ張られ結合が解放され
此れが連鎖反応を起こし素材が切り離されます。二つ目が刃物の薄さです。
刃物に素材が当たると圧力が掛かります。例えば一尺の柳刃の一点に10屯の圧力が
掛かるそうです。此の圧力に素材の結合が耐え切れず結合が外れ次々に連鎖反応が
起こるそうです。三つ目が堅さも重要な要素され硬い素材と柔らかい素材が衝突
した際、柔らかい素材が衝突の衝撃を吸収し素材の結合が外れ連鎖反応が起こる
そうです。鋼は堅い材質は脆く柔らかい材質は粘りが有り日本の刃物の合せ刃は
鋼の素材の性質に良く対応しています。西洋では日本の様な仕上砥石が無く刃物は
若干軟質です。四つ目が摩擦です。刃物が素材を当て刃を前後に曳けば摩擦が働き
結合が切れ連鎖反応を起こすそうです。切断と言う行為は此れ等が複雑に絡み物が
切れると考えられています。今後、「切断」の原理が更に研究されて近未来には、
完全解明されるでしょう。科学的に解明された暁には更に発達した良い刃物が登場
するに違い有りません。今後の解明に期待したい所です。
平成27年3月3日更新…